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SWISS紀行2007 その15 ベルニナ線沿線のハイキング 2

2007年6月27日(水) 
第7日目 サンモリッツ–>オスピツィオ・ベルニナ–>ラーゴ・ビアンコ–>サッサール・マソーネ–>アルプ・グリュム–>サンモリッツ–>セガンティーニ美術館
Part2

Sw2007_07_006_2  オスピツイオ・ベルニナには何人かの外人?と我々夫婦と10人ぐらいの日本人のグループが降りた。
 トイレやら準備体操で忙しいグループを横目に、我々は駅の裏手の小高い道に出て、白い湖を見下ろしながら歩きだした。
 決して白くは無くて緑がかった淀んだ透明度のほとんど無い湖面は、木が一本も見当たらない荒涼とした荒地と妙にマッチしている。草津や蔵王のお釜を平べったく熨したような景色だが、ここは硫黄の臭いとは無縁で、心地よく吹き渡るスイスの風が爽やかだ。
 ベルニナ線と並行しているこの道は列車を撮影する絶景のポイントでもある。さっき我らが乗っていた列車はこの先のアルプ・グリュムで上り(サンモリッツ行き)と交換する。そして暫くしてラーゴビアンコ湖畔にその車体を現す。その上り列車はその先の駅で下りの次の列車と交換して、下りがレールを軋ませながらアルプ・グリュムへ降りてゆく。殺伐とした荒野を赤い綺麗な列車が走り抜ける様はなかなか絵になる景色で、この鉄道を紹介する写真には必ずこの辺りが登場する。
 湖の堰堤が近づいてきた頃、さっき降りていった列車と交換した上りの列車の気配がしてきた。レールの振動音、軋む音などこの静かな山の上では良く通ってくる。
 カメラの準備をして線路の側で身構える。でも少し考え直して、道路の反対側の小高い部分に陣取る事にした。理由は・・・この路線のトイレ事情にあった。車内のトイレは旧国鉄時代のそれと同じだからだ。用を足しにトイレに入って便器に向かうと、薄暗い穴の先に茶褐色のバラストが後ろに流れて行くのが眼に入る。レール脇の砂利は皆茶褐色を呈している。これはブレーキでこすれた車輪の鉄粉だけのせいではないと思う。なぜなら茶褐色の砂利の上に白くこびりついたものが見えるからだ。君子危うきに近寄らず。列車のすぐ下での撮影は要注意ってことだ。
 やがて上り列車が近づいてきた。先頭を引くのはGem4/4とABe4/4の重連だ。Gem4/4はディーゼルエンジンを持つ今で言うハイブリッド機関車だ。そのGem4/4の801号が先頭でやって来た。私は興奮しながらシャッターを切り続けた。何故ならば、801号機は我が家の1/87RhBコレクションの中軸をなす車両だったからだ。いま87倍になったGemが眼の前を走っている。ファインダーを見続けた。
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 その時である。妻が素っ頓狂な大声を張り上げた・
 「あの人たちよ!熟年離婚?の!」
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 ちょうど3両目につながれた1stと2ndの混合客車が眼の前を通過していた。
 私は相変わらず夢中でファインダーを覗いてしきりにシャッターを切り続ける。1等の窓が開き、誰か手を振っている姿は確認していたが、ここでは誰でも手を振るのでそんなに気にしていなかった。
 妻が興奮気味に今の出来事を再度話すので、カメラのモニターをチェックする事にした。小さくてはっきりしないが、白髪のご主人と、一生懸命手を振るご夫人の姿が確認できた。
まさか1本後の電車で折り返してくるとは夢にも思わない。偶然とは言え2度目の出会いはこんな経緯で発生した。でもこの出会いで最後だとその時は思っていたが、実は後程劇的な再会が待っているとは、我々夫婦も。Yさんご夫妻も思っていなかったろう。

(続く)

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