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氷河急行で事故


 スイスの代表的観光列車氷河急行が大事故に見舞われました。土曜日の朝に飛び込んで来たショッキングなニュースです。この第一報をパリに住む友人からのメールで知り、すぐにTVを点け、ひっくり返った車両の映像を見て驚きました。
 2007年の6月、氷河急行に乗りました。ツェルマットからではなく途中のブリークからサンモリッツまでの行程でした。
 今回事故が起きた地点は、そのブリークを出発してすぐのfieschです。あまり記憶にないくらいですから、急勾配や急カーブの連続する地域ではなかったと思います。このルートでのハイライトはアンデルマットから2000M超のオーバーアルプパスを越える峠道で、急勾配にラックを噛ませ、大きく曲線を描きながら列車は進んで行きます。それよりずっとなんでもない、当たり前の所で事故が起きました。
 友人から送ってきたネットニュースの写真には生々しい事故現場が写っていました。
http://www.tagesanzeiger.ch/panorama/vermischtes/Toedliches-Zugsunglueck-im-Wallis-trifft-japanische-Reisegruppen/story/16873556
 Glacier Express 氷河急行を氷河特急と訳す人も多いようですが、主要駅しか停まらない各駅停車ではない「急行列車」が正しい解釈です。運行速度も驚くほど低速で、報道されているように時速30Kmほどの区間はたくさんありますし、更にゆっくり走る区間もあります。シーニック列車、風景を愛でる観光列車なのですからゆっくり走ることが最大のサービスなのです。
 こんなゆっくり走る列車がこんな大事故を起こすなんて想像も出来ません。まあいずれ事故原因が突き止められるでしょうが、一度事故を起こすと致命的な結果を招きかねない事は、冒頭のキャビンの写真でうかがい知ることが出来ます。
 大きな窓ガラス、天井部分の一部にまで大きな窓が嵌ってます。お陰で雄大な山岳パノラマをフルに楽しむことが出来ます。しかしそのパノラマと引き替えにいくつかの我慢も要求しています。この車両窓が開かないのです。空調完備で暑さを凌ぐことは出来るのですが、アルプスの風を感じることは出来ません。
 個人的には旧型車両の方が好きです。窓も十分大きいし、目一杯窓を開け、清々しい風を全身に浴びなら車窓を楽しめます。写真を撮るにも邪魔なガラスが無くなるという大きなメリットがあります。なにしろたかだか時速40km、車に追い抜かれる速度ですから窓から入る風は心地よいくらいです。
 このパノラマ窓にこだわる構造が今回裏目に出たようです。横転ならまだしも完全にひっくり返ることなど誰が想定したでしょうか。この細いピラーと窓ガラス、結局尊い人の命を守りきれませんでした。今回犠牲になられた方には謹んでご冥福をお祈りいたします。
 年々快適になる観光車両、その快適さの裏側に潜む危険を改めて知らされた事故でした。スイス鉄道ファンとしても事故原因の解明と今後の対策がとても気になります。

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