今朝は少し冷え込みました。でも陽が昇ってくると、さすがにもうすぐお彼岸、体感以上に気温が上がり始めます。こんな上天気、もったいないので少し遠くまで散歩に出かけることにしました。
昨夜少し降った雪が、ちょっとだけ道路脇にうっすらと残っています。でも肌を刺すような寒気はだいぶ和らいで、手袋もいらないくらいです。
昨日の雪でうっすら白くなった南アルプスを見ながら、気持ちの良い車道を西に進んで行くと、小気味よい水音が聞こえてきました。
ほとんど涸れ沢の多いこの地域、元気よく流れる沢は珍しいのですが、雪解けが始まったせいか、いつもはあまり水のない沢も活気づいていました。
その沢沿いに遊歩道がつけられていました。枯れ葉で覆われた山道に入ると、程なく小さな沢沿いの道が現れました。
リズミカルに、軽やかな水音を立てて流れが走っています。まだ少し弱々しい木漏れ日が水面に反射して、ユラユラと眩しい反射を返してきます。
その水音と、早春の林の中から、音楽がわき上がってきました。
ベートーベン 交響曲第6番 ヘ長調 《田園》
それはある風景を思い出したからです。
この小川、実はベートーベンが田園の構想を固めたと言うウィーン郊外の森の中の流れなのです。
2000年の早春、プラハからウィーンへ旅行したときに訪ねたのでした。時期も同じ頃で、森の緑がこれから芽吹くという季節でした。早朝出かけたカーレンベルクの丘は凄いガスの中、途中何故か道に迷いヌスドルフへ下りる筈が正反対の町へ下りてしまい、列車で戻って再度このベートーベンゆかりの流れを訪ねたのでした。
雑木林の小さな流れは、それでもしっかりと来たるべく春を告げる、期待感に溢れた、小気味よいリズムを刻んでいました。
流れに沿った小径には、瀟洒な別荘が幾つも面していたり、クラインガルテンらしい小さな畑や気の利いた小舎が点在しいて、品の良い田舎、まさしく第6番の景色が展開していました。
あれから10年。今私たちは田舎生活を始めました。春を感じる小川のせせらぎを聞くことが出来ました。第6番の次の楽章がとても楽しみです。