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SWISS紀行2007 その6 氷河急行に乗る その2

2007年6月24日(日) 
第4日目 インターラーケンwest–>シュピーツ–>ブリーク–>クール–>サンモリッツ
Part-2

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 走り出して暫くして、検札が来て、もう暫くして食堂車のスタッフが食事の予約を取りに来た。古い編成は食堂車に行って食事を摂るのだが、新型パノラマカーは自分の席で食べる。
 噂だと幕の内弁当と聞いていたが、信憑性の低いガセネタで、注文取りの様子から察してちゃんとした物が出そうだ。ほとんどの人が予約する。でも持参のサンドイッチで頑張る老夫婦もいた。飲み物も入れると40SF以上になるのだからランチとしては考えてしまう。
Sw2007_04_005 さあ豪華なランチの始まりだ。お約束のグリーンサラダからコースが始まる。サラダがスープに変わることもあるようだが、夏はさっぱりサラダが似合う。
 次に暖められた大きな皿が運ばれて来て、その上にプラムを添えて煮込んだ豚肉、たっぷりのホーレンソウのソテー、ポレンタ?の付けあわせが、それぞれ違うスタッフがサーブしてくれる。肉汁たっぷりで仄かに酸味の利いたプラムの旨味が濃縮されたグレービーなポークはなかなかの絶品だ。結構なボリュームで、それだけで十分だが、お代りはどうか?と肉が一杯入ったお皿を持ってスタッフが巡回してきた。もう結構。
 少々値は張るが、それなりに満足した食事を終える頃、列車は長いフルカトンネルを抜け、折角の氷河を見ずにアンデルマットへ滑り込む。
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 アンデルマットからが氷河を見られない現在の氷河急行の大きな見せ場になる。標高1403mのアンデルマットから2033mのオーバーアルプ峠を越える急勾配区間になる。大きくカーブを描きながら、ぐんぐん高度を稼いでゆく。ループ線とラック式の駆動方式で、するすると小気味良く高原を走って、やがて最高地点に差しかかると、今度は谷底の村をめがけて、一気に、大きく弧を描きながら下り始めた。右に左に大きく回りこむ度に、テーブルの上の飲み物が左右に移動する。あちこちで瓶や食器が床に落ちる音がする。皆慌ててテーブルの上の物を押さえている。
 氷河急行名物の傾いたワイングラスがあるが、あんなに急な傾斜の区間はないけれど、左右には相当きつくカントする。振り子型のグラスのほうが実用的ではないかな?
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 随分と高度を下げてきて、線路の傾斜も緩くなって、ディセンティスに到着。ここで暫く列車は停車する。
 理由は先頭の機関車の付け替えと、ここから増結されるRhBの車両の連結があるからだ。 
 実はここで機関車が変わる理由は、鉄道会社が変わるからだ。それまでのMGBからRhBにバトンタッチだ。でも大きなもう一つの理由は、ラック式軌道から普通の粘着式の駆動方式にシステムが変わるからだ。ラックアンドピニオンで一気に急勾配を駆け上がる旧FO方式と、あくまでフリクションにこだわり、キーキー車輪を軋ませながら高度を稼ぐRhB方式の接点でもあるのだ。

 列車はほぼ平坦なライン川沿いを走る。サンモリッツ方面への分岐ライヒェナウ駅をやり過ごし、グラウビュンデンの州都クールに到着する。さすがにクール周辺は都会の香りがする。大きな駅で列車は止まり、やがて再び進行を開始する。向きがここで逆になる。今までは編成の後ろの方で、列車が蛇行する姿が良く見えたが、今度は先頭に近いので機関車がほとんど見えない。あのランドバッサー橋には真っ先に突っ込む感じで、あまり面白くない予感が。
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 ライヒェナウでいよいよ列車はアルブラ線へと入った。実はこの氷河急行での美味しい区間はこの先サンモリッツにかけてだ。ぐんぐんラックで高度を上げる明るい高原のオーバーアルプも良いが、大きくヘアピンを繰り返しながらけなげに高度を上げてゆくアルブラ線は、緑豊かな山国スイスを体感できる絶景ルートだと思う。この日6時間以上に及ぶ缶詰列車の旅も終始飽きることなく乗り切ることが出来たのは、延々と続くパノラマショーのおかげだ。
 その後半のハイライトがランドバッサー橋。パノラマカーは絶景ポイントの案内が事前にあるので逃すことなくその時を迎えることが出来る。深い谷が迫ってきて、背の高い石の橋が見えてきた。おーっと言う歓声が上がる同時くらいに、暗いトンネルに突入した。なんとあっけない。減速してのサービスもない。窓が開かないので迫力ある写真が撮れない。
 消化不良で最大の山場を抜けたグラッシャーエクスプレスはフィリズール駅を通過。列車はあるときは大きくループを描き、あるときはシャープなヘアピンを描きながら、ぐんぐんと高度上げていった。このあたりも実は鉄道ファンには泣かせるルートで、最後はアルブラトンネルを抜け、ゆっくりとサメダンへと下ってゆく。中世の街の影を色濃く残す街を遠目に見ながら、いよいよ終点、サンモリッツに氷河急行は到着した。
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 標高1775mのサンモリッツ駅。高原の駅はこの季節とは思えない肌寒い空気に包まれていた。
 荷物を受け取って、駅の地下道を湖の方に抜けた。駅からすぐの裏手にサンモリッツでお世話になるホテルがあった。チェックインを終えて通された部屋のベランダからは湖と、サンモリッツ駅に停車している今乗ってきた氷河急行のパノラマカーが見えていた。

続く

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