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Bicycle Club 創刊号



 ヤフオクでBicycle Clubの創刊号を落とした。85年の4月号だからかれこれ30年以上前の発行だ。某サイクリング雑誌の編集者を辞めて普通のサラリーマンをしていた頃に、ある出版社が自転車専門誌を出すことになり、少し手伝って欲しいとの要請に応じて、アルバイトで編集のお手伝いをした。
 実はこの雑誌、「ライダースクラブ」という多分に趣味的なモーターサイクル専門誌の姉妹誌として誕生したのだ。
 しかし暫くして本業が忙しくなり、創刊から数号でお手伝いもお断りし、第一線から退いてしまった。
 自分が絡んでいた事もあって、創刊号からしばらくの間のバックナンバーを蔵書していたのだが、その後転居時に行方不明になってしまって、手元には1冊も無くなっていた。
 このところ自転車の昔なじみと遊ぶ時間が増えてきて、初期のBC誌の話題が出ることもあった。ふと昔が懐かしくなって、行方不明の雑誌を探したが後の祭り。どうも処分したらしい。そこで気長にヤフオクに出てくるのを待っていた。
 それが出てきた。早速落札した。今週初め届いた。


 懐かしい創刊号とご対面。気になっていた記事を読み返してみた。
SLTMの世話人W氏のルネ・エルスの紹介記事だ。マニアックな自転車を写真で紹介するお約束のようなページだが、そこに所有者の人となりを重ね合わせることで、自転車と人の関わり合いを鮮明に浮かび上がらせようと言う企画だ。
 パリのルネ・エルスの工房で彼がその自転車をオーダーしたときに私は同席していた。そんな経緯もあって、彼のエルスについての件りを初回のテーマに選んでみた。
 じいさまになって、記憶が随分吹っ飛んでいるせいか、他人の書いた記事を読んでいるようだ。昔の文章を見ていると、その拙さに思わず冷や汗が出ることがあるが、何故かこの記事は醒めて見ることが出来た。署名記事ではなく、紙面に自分の名前が無いこともあるが、客観的な史実を読んでいるような所があって、消えかかっていた遠い日の出来事が、大きなディスプレーに映し出されるように、記憶が蘇ってきたのだ。
 晩秋のパリの街、地下鉄に乗って、少し街外れの自転車工房を訪ねたその日の記憶が、夕陽のような赤みを帯びたセピア色の景色で頭の中をくるくると回り巡っている。

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