バッハ　無伴奏チェロ

　東京へ出たついでに、中古のCD屋さんへ寄ってみました。前は勤め帰りにたまに顔を出していたお店で、クラシック専門店です。
　物色しているうちに珍しいのを発見しました。バッハの無伴奏チェロ組曲。取り立てる程のことはないポピュラーな楽曲ですが、その内容にそそられるものがありついレジへ運んでしまいました。
　このCDに興味をもったポイントは以下です。
　一つは今まで聞いたことのない演奏者。マーティン・ツェラーと言う若手？で初めて聞きます。
　二つめ･･･これがひかれた最大のポイントですが･･･1673年製らしいヤコブ・シュタイナーというバロックチェロが使われていることです。使用できる現存している唯一の楽器らしく、クレモナのストラデなどが台頭する以前は最も注目を集めていた楽器らしいのです。
　古楽器ファンとしてとても興味がそそられました。
　三つめはこれまた初めて手にする　Ｍ・Ａレコーディングズというマイナーレーベルと言う事です。音にこだわったレーベルのようで、この様な演奏にはもってこいのプロデュースです。


　CDの盤面も普通ではなく、写真では黒く見えますが実際はダークグリーンで見慣れたシルバーとは趣が異なります。板も厚手で、何かやってくれるな、と言うお膳立て満点です。
　演奏はなかなか素晴らしいものでした。若手と言っても奇をてらうようなところは少なく、素直で自然に聞かせてくれます。マイスキーとは大違いです。
　肝心の音ですが、豊かでまろやかな音で、古楽器にありがちな少し耳に障るような雑味がありません。録音の妙もあるかも知れませんが、チェロが1本朗々とメロディーを響かせます。
　演奏の批評が出来るほど音楽の造詣は深くなく、へたりきった年寄りの耳ではオーディオ的な吟味も出来ません。でも理屈は抜きでバッハを楽しませてくれる一枚と言う事が出来ます。良い一枚を手に入れました。