小淵沢でのアタックベース、H邸での地鎮祭前夜祭?でW御大が持参したROLLEIFLEXと借り物のHASSELBLADが顔を合わせた。
いまや少数派、アナログ銀塩の、しかも6X6版の往年の名機が揃ってテーブルの上に鎮座した。
Wさんのローライは数ヶ月前、旅行途中に紛失、程なく無事に本人の手に戻ったと言う曰く付き。サイクリングや旅には必ずこの四角い塊がお供している愛着のカメラだけに、一時でも姿を消したのはショックだったらしい。
パソコンを扱わない彼の依頼で、時々そのリバーサルフィルムをスキャンして、大判のプリントに加工しているが、先日も今年Wさんが出かけた若狭の旅の一枚をプリントした。
入り江の奥に居並ぶ舟屋の写真だった。
整然と海面に向けて口を開いて勢揃いする舟屋。その背後に鄙びた集落が山肌に貼り付き、その中央に満開の桜が一本。舟屋の前には碧がかった深く落ち着いた藍色の海面が、ほんの少しさざめいて広がっていた。
とても良い写真だ。その写真を引き立てている要因の一つがこの老ローライであることが察せられた。
6X6という余裕のあるフォーマット、レンズはPlanar T*の80mm:F2.8。この切れの良いレンズが大いに貢献している事は間違いない。
デジタルに慣れきった目に、この写真のあり方はとてもショッキングだった。フィルムも良いな、それもブローニー・・・、回れ右、Uターンを促す天の声か。
そこで登場がハッセルだ。これは同じ6X6版でも一眼レフ。ピントグラスを上からのぞき込んで、左右が逆になったスクリーンで構図を決めピントを合わせる作業は同じだ。
ローライはドイツ、ハッセルはスエーデン。素材の使い方、デザインにお国柄が良くにじみ出ていると思う。このハッセルは一世を風靡したカメラだ。プローニー版コマーシャルフォトの現場では独壇場で有名なプロカメラマンは必ずこれを使っていた、ように記憶している。国産でこれを模したカメラも生産された。月にも行った。
ローライはしっかりした箱の中に全てのメカが納められているが、ハッセルはまるっきり逆。レンズ、フィルムマガジン、巻き上げレバー・・・全てユニットでバラバラになる。必要な機能のユニットを組み合わせて、望む性能を作って行く。ガンダムのプラモみたいに。
これをSさんから借りて暫く使っている。フィルムの装填に失敗したり、露出がぴしっと決まらなかったり、逆に流れるファインダーに戸惑ったり・・・。
でもデジタルにはない写真の撮り方がアナログにあることを再認識した。慎重な露出、ピント出し・・・そして一枚。クランクを回してフィルムを巻き上げて・・・。
この一連の動作がとてもスロー(下手だから?)で、撮影枚数が極端に減る。デジタルではあっという間に100枚も撮ってしまうのに、12枚撮りの120フィルムを一日経っても撮り終えない。じっくり被写体と対話し、無駄なシャッターを切らないからだ。もちろんフィルムの消費、現像などコストも十分頭にあるからなおさらだ。
押せば写る、コストはかからない(手間は増えるが)デジタルで忘れたものをアナログが教えてくれる。
このハッセルにもPlanarの80mmT*が着いている。条件としてWさんのローライと同じだ。
うーんもう少し頑張って、ローライの舟屋に負けない一枚をものにしなくちゃ。