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ポール・モチアンも

 私の大好きなアルバムの一つがビル・エヴァンスのワルツ・フォー・デビーです。

 これはニューヨークのJAZZクラブでのライブ録音で、ゆったりと滔々と流れる至福の刻を切り取った名作です。大きなコンサートホールでのピリピリした演奏とは違って、こじんまりしたJAZZバーで演奏者と客が同じレベルのフロアでのアットホームな演奏です。
 リラックスして楽しむ様に演奏するTRIOの音の流れに時折観客の私語のノイズが交錯します。大きな音で食器が落ちたような金属音も聴こえて来ます。その有様はまさにライブです。

 この時のビル・エヴァンスTRIOのメンバーは、ピアノ=ビル・エヴァンス、ベース=スコット・ラファロ、ドラムス=ポール・モチアンでした。ピアノトリオを編成する楽器は皆リズム楽器に分類されます。基本的にトランペットやサックスなどのメインの楽器のサポーターと言う事です。しかしビルは単なるリズム楽器を音楽的に飛躍させる事に成功しました。インタープレーと呼ばれる様式で、三者が掛け合いながらセッションを展開するのです。ピアノが歌い、ベースが応え、ドラムが支える・・・単にリズムの応酬ではなく、音楽的な精神の応酬が展開されるのです。

 その時のキーパーソンはベースのスコット・ラファロでした。ボンボンボンボン♫と単調なリズムを繰り返すだけのベースが、ピアノの裏で歌い始めたのです。彼のベースとエヴァンスの感性が融合して名盤が何枚も生まれました。でも残念ながら彼はこのアルバムを残してすぐに夭逝してしまいます。

 二人を支えていたドラマーがポール・モチアンでした。華やかな二人の影に隠れるような存在でしたが、やはりインタープレーの一角を担う重要なメンバーであった事は確かです。繊細なシンバルワークや歌うようなリズムで全体をまとめていたと思います。
 
 そのポール・モチアンが亡くなったと新聞記事で知りました。ラファロが居なくなり、エヴァンスも逝って、モチアンも・・・。今頃天国でビル・エヴァンスTRIOが何処かでライブを開いているかも知れません。
 今日は一日このアルバムのヘビーローテーションになりそうです。ご冥福をお祈りします。

2 Comments

  1. gentulio

    僕も新聞記事で知りました。
    知的でクールなドラマーでした。
    冥福をお祈りします。

    • suzuki@ugc

      大好きな50年代、60年代のJAZZが化石化しますね。
      あと誰が残ってるのかな?

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