© 2007 pico6. All rights reserved.

SWISS紀行2007 その8 ベルニナ線でティラノへ 2

2007年6月25日(月) 
第5日目 サンモリッツ–>ティラノ–>ディアボレッツァ–>ポントレジーナ–>サンモリッツ
Part2

Sw2007_05_011_2

 ティラノ駅は明るいイタリアの光に包まれていた。ホームの先にはちゃんと検問所があって、パスポートの提示を求められた。まあそのまま通過しても良いのだが、記念にスタンプを押してもらうことにした。二人のパスポートを持っていったイミグレーションは、事務所のコンピュータで照会作業をしているのだが、結構時間がかかる。ためつすがめつ、しげしげとパスポートを検査、まるで怪しいものでも見るような仕草だ。偽物じゃないって。暫くしてやっとスタンプを鷹揚に押してから我々の手元に返してくれた。一緒に降りた乗客は、とっくに三々五々街の中に消えていた。
 駅前の広場にはオープンカフェ、レストランがあって、昼には少し早い時間もあってかお客はまばらだった。
Sw2007_05_012

 ティラノは静かな街だった。何のインフォも持たずに、足の向くまま市内を歩いた。周囲に山が迫り、盆地のような地形で、街の中央を川が流れていた。中世から続く街だろう事は、古びた石造りの建物が並ぶ路地を入って行くと実感できる。
 あても無く街の中心を歩く。門のようになった建物の通路を抜け、路地から路地を駅に戻るように歩いてみる。それまで居たスイスとは随分と雰囲気が違う。やっぱりここはイタリアなのだ。どこかおいしそうなパスタでも食わせるところは無いかと探したが、見つからないまま駅に戻った。結局駅前のレストランに入った。
 オープンな店頭のテーブルに席を取る。市内を歩いているうちに、丁度昼食の時間になった。周囲を見ると観光客よりも地元の人が多い。現場で仕事中の職人集団や、いつもランチを食べに来る人、駅に関係した仕事の人などなど、日本で普段昼食に行っているサラリーマンで一杯の食堂と大きく変わらない。
 オーダーを取りに来た陽気なイタリア人にオススメを聞いた。パスタはボロネーゼ、ピザはマルゲリータと定番イタリアンが返事だった。ほどなくテーブルに運ばれてきたお皿は、期待通りの味で満足だった。モッツアレラチーズの美味しさ、香ばしく焼けたピザの台、お肉!の味がしっかり出ているボロネーゼ。やっぱりここはイタリアなのだと胃袋が納得していた。
Dscn0434

 滞在2時間のイタリアだった。戻りの列車に乗り込んで、路面電車状態のベルニナ鈍行が山に向かって走り出した。狭い並行する道路を走る車が、恐そう。
 暫くして検札。びっくりした、帰りの車掌さんは来るときと同じ若い美人さんだ。貸切状態の1等車で彼女は我々に色々説明してくれる。でも乏しい語学力、数パーセントしか理解できない。写真を撮るならオープンのパノラマカーがある事を教えてくれる。黒部のトロッコ列車みたいなやつで、黄色のボディーの派手な車両で、実は私の模型コレクションにもあるので良く知っている。パンフをくれたり、熱心に勧めてくれたのだが、いざ運行予定を確認したら、残念7月1日からだとわかった。あと数日あとに来れば乗れたのに…と残念がっていた。
 彼女ダボスに住んでいるという。今回ダボスによる時間は無い。いつかダボスで再び会える日がくることを期待したい。
Sw2007_05_013

 ブルジオのループでもう一度目を回し、キリキリとレールを鳴らしながら2千メートルもの高度を、歯車の助けを借りずに登りきった列車は、再びラーゴビアンコの湖畔を快調に進行する。来る時ガスに包まれていた氷河が顔を出している。すっきりくっきり晴れてはいないが、くもの切れ目に深い青空が見え隠れする。ここでかすかな期待が出てくる。「ディアボレッツァに上がってみるか」だめもとで展望台に上がることにした。
 ディアボレッツァ駅で列車を降りる。あの車掌さんが名残惜しそうに妻とハグ。列車は下っていった。
 ロープウェイの駅は少し上がった所にある。すっきりしない天気のせいか、他の乗客はいない。スイスパスを見せて半額で切符を買う。あとで判明するが、エンガディンパスがあれば、ここもフリーパスになったのだ。損した。
 結局登りの乗客は2人だけ。俯瞰する景色はまあまあの天気だが、行く手の山頂付近は厚い雲が覆っている。到着したディアボレッツァは寒かった。荒涼とした小広い稜線に展望台が建っている。その足元の谷は氷河が埋め尽くしている。氷河は蛇行しながら谷間を下り、その末端までは尾根に隠れて確認できない。駆け上がる氷河の頭もガスに隠れている。晴れていれば目の前にピッツパリューやピッツベルニナなど4000m級の峰々が聳え立っている筈だ。辛うじて見える氷河の鎧の裾でそのスケールを推し量る他に無い。
Sw2007_05_014

 展望台の中は暖かく静寂な世界だった。大きな窓には氷河が広がっている。休んでいる人も少なく、景色を独り占めしながら、ゆったりとお茶を飲む。時折雲が切れて青い空が一瞬見える。少し期待を持たせるような雲行きだが、劇的な変化は起きそうも無く、諦めて下ることにする。下りは少し乗客が増えた。それでも大きなゴンドラに10人もいないので、ガラガラで寂しい。
Sw2007_05_015_2

 ベルニナ線の駅に戻り、列車を待つ。最初に来た列車は通過して行った。いわゆるベルニナ急行のパノラマカーだ。しばらくしてやっと列車が到着。2両目のABe4/4型動力車の1等に乗る。今度は先客がいたが、1コンパートメント分はそっくり空いていたので、左右の窓を開け放しての撮影に不自由はしなかった。
 広く開けた谷間を行く線路に沿って、トレッキングルートが続いている。ぽつぽつと歩いているハイカーを見る。いつかのんびりと歩いてみたくなる。

 ポントレジーナで列車を降りた。ここからちょっとした丘を超えてサンモリッツまで小一時間、締めのハイキングとする。指導標を頼りに線路のガードをくぐり抜け、背の高いタンネの森に踏み込んで行く。整備された道が林の中を貫いている。自転車、ハイカー、ジョガー、散歩者、そして馬…。いろんな目的で歩かれているらしい。もう夕方だが、頻繁にすれ違う人が来る。大きな木が茂るが意外と明るい森。木と木の間が広く、光が根元までよく届く。下草にも高原の花が混じる。この明るさ、日本の森との大きな違いだ。
Sw2007_05_016
Sw2007_05_017
やがて開けた湿原と湖のある地形に出た。ホテルらしき建物もある。そこからサンモリッツまで一息のところだ。途中サンモリッツ湖畔の遊歩道に直接下る道があったが、車道をそのまま行った。しかしこれは失敗。大きく迂回してサンモリッツ湖に出る道らしい。面倒なので途中の別荘らしき住宅地の庭を、強引にショートカットして湖畔に降り立った。
 湖畔で釣りをしている人を珍しそうに見ていると、ちょっと来い、と言う。湖の縁に設置してある生簀まで案内される。生簀の蓋を開けてたも網を中に突っ込んだ。引き上げると数匹の魚が上がってきた。型の良いブラウントラウトだ。彼らは漁師らしい。多分ホテルのディナー用に魚を納めているのだろう。
Pc3_7956

 そこから駅裏のホテルまでほんの一投足だった。

コメントを残す

Your email address will not be published.
Required fields are marked:*

*